物語の責任

物語の責任

「物語の責任」について考えています。物語を書きかけで放り出している人間に責任というのはあるんでしょうか。

私は本が好きですので、友人も本好きが多いのですが、本を読むのが好きな人間の内、一定数は本を書きたいと思っていて書くのが好きな人間です。これは絶対なのではないでしょうか。昔はどうだか知りませんが、今はインターネットという媒体がありますので、原稿用紙に長い物語を書き上げてどこかの新人賞に応募をする、且つその賞を勝ち取る、なんて大がかりなことをしなくても、インターネット上で自分の作品を発表することができます。手軽に。携帯小説というのも一時期ずいぶん流行りましたね。今はそれほど聞かない気もしますが、きっと馴染みすぎて今更話題にされなくなっただけなのでしょう。

私の友人に本業はOLなのですが、インターネットで自作の小説を発表している人がいます。私は彼女の小説を読みたいからURLを教えてくれと言っていたのですが、彼女は知り合いに読まれるのは恥ずかしいと断固拒否して読ませてくれません。それなりに通ってきてくれる人もいるらしく、楽しく書いていたらしいのですが、変化がありました。異動になって、仕事が面白く、また忙しくなったそうなのです。彼女は今は小説に興味も薄れ、本業の仕事の方に力を傾けていて、だからサイトで発表していた続き物の小説をずっと更新していなかったらしいのです。一年以上も。

そこへサイトを毎日更新していた頃に親しくしていた人からメールが届き、続きは書かないのですか、と言われたというのですね。もともと好きですから、続きを読みたいと言われて嬉しくないわけはないのですが、でも彼女の中にはもう続きを書く気はないらしいのです。しかし物語は放り出されたままになっている。登場人物たちはピンチになったまま。

一番いいのはありのままに事情をサイトに書いて、サイトを閉じることなんでしょうが、彼女はせめて昔書いたものくらいそのままにしておきたいと思っているらしいのです。読み返したい人がいたら読みかえせるように、というのですが、しかし。

インターネットが出来て、物語は気軽につづられ、発表されるようになりました。しかし同時に無数の放り出された物語がこの世に存在しているのではないでしょうか。それらはどうなるのでしょうか。放り出された物語の責任は誰がとるのか。難しい問題です。

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魔王と三人姉妹と魔術師の父親の話

昔むかし、世界中のどこでもそうなのかもしれませんが、オーストラリアの青い山、ブルー・マウンテンズにも魔王がいました。魔王が眠っていると、三人の娘(だったか三人の娘の内の一人だったか)がやってきて魔王の眠りを妨げてしまいました。寝てる魔王にけつまずいて転んだかなんかしたんでしょうか。アボリジニにだって萌え系のドジッ子はいたでしょうから、まぁそんなところでしょう。当然魔王は怒ります。こっちは魔王だっていうのに、一体この馬鹿娘は何を考えていやがるんだ、身の程わきまえろ、と。魔ではあっても王ですからね。プライドは保ちたいところです。

さて、娘たちは家へ逃げ帰ったんだかなんだか、娘たちのピンチはその父親の知るところとなりました。彼女たちの父親というのは峡谷にすむ魔術師でした。まぁ普通の狩人とかよりはいいですよね。魔王に対抗できそうで。「何やってるんだ、お前たちは」と叱ったかどうだかわかりませんが、怒り狂ってどんどん追ってくる魔王から娘たちを守るために魔術師の父親は魔法の骨を使って娘たちを岩に変えました。そして自分は鳥に姿を変えて逃げたのですが、飛びながら逃げる途中になんと!魔法の骨を落としてしまったのです。それからブルー・マウンテンズでは今も、鳥になった父親が魔法の骨を探しているのが見られるということです。

というのが有名なブルーマウンテンズの三つ並んだ岩山、スリー・シスターズの伝説(アボリジニの伝説です)だそうです。ちなみに、父親が姿を変えた鳥というのはライアーバード(LiarではなくLyreです)という鳥で、公園内のウォーキングコースでもあまり見かけることができないそうです。私たちは見ることができたのですが、それはあるツアー参加者のおじさまのおかげでした。

彼はガイドさんより早く「おいっ、いたぞ!」と大声で叫びました。かなり早い段階で彼が気がついてくれたおかげで私たちのグループは写真をとることができました。このおじさまはとてもチャーミングな人で、その後鳥を見失った人たちに「ほら、いたぞ」なんて言って上の方を指さして見せていました。その先には普通の登山客の欧米人のおじさんが、メタボなお腹をゆすって歩いている姿がありました。

「ほら、お父さん鳥は魔法の骨を見つけて、人間に戻れたんだ」なんて言っていて、実に愉快な方でした。彼はその日の文句なしのMVPでした。